SaaS向けダッシュボード構築例
SaaS(Software as a Service)と呼ばれるいわゆるクラウドサービスでは、ダッシュボードの構築が大変重要になります。解約率(Churn Rate)や月次収益(MRR: Monthly Recurring Revenue)と言った指標を常に可視化しながら、マーケティング費用、営業費用、開発費用の割当を計画し、事業の拡大を図ってゆきます。
SaaS KPI
ビジターと新規ユーザー
サービスの紹介ページに訪問するユーザー数と、紹介ページからアカウントを作成し、無料ユーザーとなるユーザー数を一つのチャートに表示させています。一方、訪問後に無料ユーザーとなる割合(コンバージョンレート)も表示させており、縦軸が両側2軸のチャートとなっています。
SaaSの場合、多くのサービスで無料プランが用意されます。まずは無料で使ってもらうユーザーを増やす必要があります。そのためには、
- 紹介ページから無料ユーザーになってくれる割合(コンバージョンレート)を高める
- ビジターの数を増やす
のどちらかが必要になります。一般的に2は広告宣伝費を投入することで増やすことが可能です。1については紹介ページのデザイン、文言、登録までの経路などを試行錯誤し、改善を試みます。
新規無料登録&課金ユーザー
こちらのチャートは、
- 新規に無料登録したユーザー数
- 有料プランに加入したユーザー数
を縦右軸に表示、
- 無料プランから有料プランに変更したコンバージョンレート
- 有料プランから無料プランへのダウングレードやユーザーアカウント自体の解約を行った割合
を縦左軸に表示しています。月別のチャートです。
ユーザーの解約はChurn(チャーン)、解約率はChurn Rate(チャーンレート)と呼ばれます。
顧客獲得コスト
新規に無料プランへのユーザーを誘導するために、広告宣伝費が必要です。
顧客獲得コストは主にソーシャルメディアや検索エンジン、コンテンツマーケティング等のマーケティング費用です。B2Bビジネスの場合であれば、営業費用も含まれます。
解約率(月次収益ベース&アカウントベース)
月次収益の観点からの解約率とアカウント数の観点からの解約率(チャーンレート)を表示しています。
アカウント数ベースの解約率は単にチャーンレートと呼ばれ、月次収益ベースのチャーンレートはMRRチャーンレートと呼ばれます。SaaSビジネスではチャーンレートは特に重要です。一言でチャーンレートと言っても色々と切り口があります。どれか一つだけをモニタリングすれば良いということではなく、複数のチャーンレートを全て確認しながら施策を実行してゆくべきです。
新規月次収益
月ベースで、新規に増減の動きのあった収益を表示したチャートです。
- 新規に有料プランに契約したユーザーからの収益
- 既に有料プランに契約していたが、更に高額の有料プランに新規に契約したユーザーからの収益
- 有料プランに契約していたユーザーの解約による減益
を表示しています。
SaaSビジネスの場合、収益が増える要因は新規の有料ユーザーの獲得だけではなく、課金ユーザーによるより単価の高いプランへの乗り換えによるものも挙げられます。どのビジネスも収益は基本的には単価✕数量で表されます。数量だけでなく、顧客単価を上げて収益増を実現します。
ユーザー平均単価(ARPU)
ユーザーごとの平均単価を月次ベースで出しています。ARPU(Average Revenue Per User)と呼ばれます。
新規月次収益で述べた通り、SaaSビジネスでは有料課金ユーザー数の増加を図ると同時に、ユーザーにより金額の高いプランへの乗り換えを促し、事業を成長させることが重要です。ARPUを可視化することで、乗り換えの誘導の実行結果が直接的に判断出来るようになります。
月次成長率
これまでのチャートでは、以下を可視化してきました。
- 紹介ページに訪問したユーザー
- 新規に無料プランに登録したユーザー
- 収益
- 新規に有料プランに登録したユーザー
これらの指標を、数値ベースで見ることはもちろん重要ですが、月次ベースでの成長率として見ることも重要です。
成長率として捉えることで、1ヶ月間に行った施策の効果を評価することが可能になります。また、例えば無料プランユーザー数の推移であれば順調に増えているように見えても、無料プラン新規登録数の成長率として見ると、ある月より次の月の登録数が少ない場合、成長率はマイナスとなります。つまり、事業の成長具合をより直接的な表現方法で可視化することが可能になります。
正味月次収益内訳
正味月次収益の内訳です。月次収益は、MRR(Monthly Recurring Revenue)と呼ばれ、特に正味月次収益はNet MMRと呼ばれます。
月次収益は、前月までの月次収益に、新規に有料プランに登録したユーザーからの収益、より高価格のプランに乗り換えしたユーザーからの収益を加え、解約による減益を引いて算出されます。